注意
- 公式ファンブックの雉明があまりにも天使(むしろ小悪魔?)だったために書いてしまったSSです。
- 公式ファンブックの『雉明のメール』『長英の呟き』をご覧の後にお読みいただかないと、状況がよくわからないと思います。
- 時間の流れとしては、このSS→『雉明のメール』→おまけの長英のブログ→『長英の呟き』、という順番です。ゲーム中の後半あたり?
雉明があまりにも長いこと見つめていたせいだろうか。四角い箱に向かっていた学生が、雉明に箱の用途を教えてくれた。いわく、カミフダのように多くの情報を蓄積し、しかも不特定多数が自由に蓄積された情報を得ることができる箱だという。
驚いている雉明に、学生が間近で使ってみせてくれる。学生が文字を打ち込むと画面が切り替わり、たくさんの文字が現れる。魔法使いのようだ、と思わず感嘆の声を上げると、得意げな顔をした学生は箱の使い方を丁寧に教えてくれた。
学生の言うように操作すると、確かに次々と違う画面に切り替えることができる。本当にこの箱の中には、一冊の本と比べものにならないくらい、たくさんの情報が蓄積されているらしい。本どころか、特定の分野に関してはカミフダ以上の情報量かもしれない。
学生が去った後、一人で箱に向かう雉明は考える。
今、自分が知りたいことは何だろう、と。
自分がやるべきことは、もう知っている。もう少し時間があれば、という気持ちは少しずつ大きくなっているが。
人として出逢ったせいだろうか、それとも七代の性格故か。七代のくれる情報は、きらきらと輝いていてとても愛おしい。もっと、もっと、と欲しくなる。自分がこれほど貪欲だとは知らなかった。
膨大な情報があるというのならば、もしかして、七代と共に在れる方法も―― 。
いや、それは虫のいい話だ、と思い直す。
唯一を選びとったひとは強い。だからこそ、唯一を間違えるわけにはいかない。
七代……きみはいま何を思っている――?
何度目かわからない独白を唇にのせた時、今自分が知りたいことが思い浮かんだ。
『からすのもりがくえん』
と打ち込んで検索する。学校の紹介、ニュースなど読んでいくうちに、個人の日記を見つけた。どうやら、書いているのは鴉乃杜に通っている男子学生らしく、雉明も知っている場所や地名が登場する。
何か惹かれるものを感じて読み進めていくと、書き込みの中に頻繁に登場する『先輩』の存在が、『彼』に大きな影響を与えていることがわかった。
彼は、『先輩』がとても好きらしい。読んでいると、雉明まで暖かい気持ちになる。
悩んでいる時に『先輩』の何気ない一言に勇気づけられたこと、朝から『先輩』に会うことができて一日中気持ちよく過ごせたこと。
雉明にも思い当たる感情だ。
しかも、『先輩』の言動は七代にとてもよく似ている。日記の書き手に同調することで、まるで七代と一緒に学校生活を過ごしているような気分になった。ぽかぽかと心が温かくなる。
そうだ、と思いついて、ついさっき学生に教えてもらった『書き込み』というものを試してみた。雉明がここに確かに存在していたという証を、刻みこむ。
しばらく画面を見つめた後、雉明は七代にメールを送りたいと思った。
同じ時間を共有できなくても、今自分が確かに感じているこの想いを伝えたい。伝えられることがとても嬉しい。
そしてできることなら、雉明の存在の証を見つけてほしい。
一時間後。雉明は祈るように送信ボタンを押して、席を立った。
【了】