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(現在、鬼祓師2種、九龍1種です)


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心音 (鬼祓師SS)


 

※ファンブックに触発されたSSです。
※ある日の雉明の睡眠時間が0だったと知って。
※時間軸は適当です。真ENDの前後?

 

 

「――なあ、零」

「なんだろうか」

「お前は寝ないのか?」

「それは……」

 雉明は言い淀む。今雉明は、七代の横に敷いてもらった布団の中にいた。これほど傍にいられるということが嬉しくて、ついいつまでも七代の顔を見つめていたのだが、七代には居心地が悪かったらしい。

 自分は眠らなくても良いのだ、ということを今は告げたくなかった。七代は今寝るところなのだから、寝ないなら別の部屋に行け、と言われるのは悲しい。

 雉明が困っていると、七代は少し考えて、

「眠れないなら、目をつぶっているだけでも違うぞ」

 と教えてくれた。

「そう、なのか……?」

「ああ。入ってくる情報を減らして、脳を休ませる……だったか」

「やってみる」

「そっか。おやすみ」

「おやすみ、千馗」

 追い出されないことにほっとして、雉明は目を閉じた。

 本当は、目を閉じるのはあまり好きではない。鬼札が眠るのは、花札が封印される時だ。真っ暗な視界は、主を失う後悔とともにあるものだから、雉明を不安にさせる。

 だが、目を閉じると、七代の顔を見るのに一生懸命だった時は気づかなかったことに気づいた。

 音だ。

 七代の規則正しい呼吸音。そして、五感が鋭敏な雉明が意識して耳を澄ませると、七代の心音も聞こえてくる。生きている人間の存在を示す音だ、

 視界には何一つ映らない。だが、絶えず聞こえる七代の生命の音が、ここにある。

 雉明の目に涙が浮かび、雫となり落ちてシーツを濡らした。七代は生きている。まだ雉明は七代を失っていない。その事実を噛みしめる。

 涙が引いた後、ひたひたと満ちてくるこの感情が幸福なのだと、今の雉明は知っている。

 愛おしい音に包まれて、雉明は不安を感じることなく暗闇に身を委ねた。

 そうしてどれくらい時間が経っただろうか。

「……ろ……零!」

「――……え?」

 はっと目を開けると、七代が雉明をのぞき込んでいた。

「おはよ。お前、案外寝起き悪いのな。何度も声をかけたんだぞ?」

 意外な発見だ、と七代が笑う。

「……おれは……寝ていた……?」

 雉明は呆然と呟いた。単にぼんやりしていて、声に気づかなかっただけかもしれない。

 だが、体に入っていた無理な力が抜けて、少し軽くなった感じがする。

 七代と一緒だと、雉明も眠りの真似事ができるらしい。

「……やっぱりすごいな、きみは」

 雉明が微笑むと、七代は目を細めて雉明の頬を優しくなぞった。涙の跡に気づかれたのだろうか。少し、恥ずかしくなる。

「よくわからないが、顔色はいいみたいだな」

「きみのおかげだ」

「だとしたら、嬉しい。さて、早く準備して清司郎さんの手伝いをするか」

「ああ」

 部屋に差し込む朝日を感じながら、雉明は部屋を出る七代の後を追った。  


- PatiPati (Ver 4.4) -